ICTシステム導入のメリット・デメリット

仕事量が多い保育士の負担を減らして人材の確保につなげようと、政府も推進しているICTシステム。導入すれば園側だけでなく保護者にもいくつもメリットがもたらされます。
ここでは小規模保育園をICT化するメリットと、一方で考えられるデメリットについてもご紹介しましょう。
現在ICT化を検討している小規模保育園を経営者する皆さんはぜひ参考になさってください。

ICTシステムを導入するメリット

これまでにICTシステムを導入している多くの小規模保育園に共通する具体的なメリットをご案内します。

■事務作業の時間短縮
毎日手作業で記録を残すことは規模の大きな保育園ではもちろん、園児の少ない小規模保育園でも保育士にとってかなりの負担です。特に保育士の扱う書類は仕事柄、保育日誌や連絡帳など、同じ情報をこっちでもあっちでも書き写すことが少なくありません。
しかしICTシステムを導入すれば園内で同じ情報を共有することができるので、一度登録した情報は二度・三度と入力しなおす必要がなくなります。園児や保護者の基本情報をさまざまな書類に反映させることで、入力の手間が省けるだけでなく書き写す際のミスを防ぐこともできるのです。
経済産業省の調査によると、ICT化によって短縮できる事務作業の平均時間は83時間ともいわれています。手書き作業や書類整理にかかる大幅な時間短縮は、ICTシステム導入のもっとも大きなメリットになるでしょう。

■コスト削減
連絡帳や園だより、給食の献立表など、これまですべて紙で保護者とやり取りしていたものが、すべてシステム上で完結します。さまざまな記録がデータ化されるため用紙や印刷のコストが削減できるのはもちろん、園内の書棚や収納スペースの節約にも。
また職員も作業負担が減って残業が少なくなるので、人件費のコスト削減にもつながります。

■保育士と保護者の連絡がスムーズ
ICTシステムを導入後、保護者は欠席や遅刻の連絡、延長保育の依頼などをスマホひとつで簡単にできるようになります。一方で保育士から見ても朝夕のあわただしい時間に電話を受ける必要がなくなり、他の保育士への伝達漏れもなくなるので、双方にとって大きなメリットといえるでしょう。
園からの緊急連絡も、アプリのプッシュ機能で保護者はスピーディーかつ、仕事中に自身の都合でさっと確認することが可能です。

ICTシステムを導入するデメリット

多くのメリットがある一方で、ICTシステムを導入にはどのようなデメリットが考えられるのでしょうか？導入前の注意点ともいえるので、検討する際の判断材料にしましょう。

■初期投資が必要
小規模保育園にICTシステムを導入するには、そもそもインターネット環境が整っていることが必要不可欠です。
環境が不十分だとシステムが存分に活用できない可能性も。インターネットの回線速度が遅かったり園内で接続できない場所があったりするとデータ送受信ができないので、かえって仕事が不便になってしまいます。
また、保育士の人数に見合った台数のノートパソコンやタブレットを用意する必要がある園も多いはず。
ただしこうしたICTシステム活用のための初期投資は、補助金制度を利用することでほぼ負担ナシにすることも可能です。導入時にはぜひ申請も合わせて手続きしましょう。

■抵抗を感じる人がいる
基本的にどこのICTシステムも誰もが簡単に使えるように設計されているとはいえ、そもそもパソコンやスマホ、タブレットの操作が欠かせません。
1人1台スマホを持つのが当たり前の時代になって久しいですが、それでも普段からSNSやメッセージアプリしか使わないというような人の場合は、抵抗を感じることもあるようです。
パソコンやタブレットの操作に不慣れな職員には研修を行ったり、保護者にも入園時に丁寧に説明するなど、システム導入前から双方に理解と協力を求めましょう。
場合によっては希望する保護者にだけは園だよりなどをプリント配布する、という配慮も必要かもしれません。